甘い誓いのくちづけを
―――――――…



「……で、あれから一度も会ってないの?」


二人きりの会議室で飛んで来たのは、どこか呆れたような声。


榊原課長に頼まれて、さゆりと一緒に午後の会議で使う資料の準備を始めたところまでは良かったけど…


最近は理人さんとの事をめっきり報告をしていなかったあたしに、彼女はとうとう痺れを切らしたみたい。


「……うん」


「本当に一度も会ってないの?」


訝しげに眉を寄せたさゆりが、少し離れた場所から念を押すように同じ事を訊いた。


資料を並べる手は止めずに、ため息混じりの苦笑を零す。


「うん……。理人さん、忙しいみたいだから」


小さく答えたあたしに、これみよがしに大きなため息が返って来た。


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