甘い誓いのくちづけを
―――――――…



「……ただいま」


ポツリと呟いた言葉は、静かな部屋に溶けるようにして消えた。


今日はいつも以上に疲れてしまって、もう何もする気になれない。


ため息混じりに床に座り込むと、壁に掛けてあるカレンダーが視界に入って来た。


とっくに終わってしまったゴールデンウィークに、もしかしたら理人さんから誘われるんじゃないかと、密かに期待していた。


だけど…


それは淡く色付いた直後に打ち砕かれ、いつ誘われてもいいようにと空けていた時間を持て余す事になった。


結局、ゴールデンウィークはさゆりとランチをしたのと、部屋の掃除や衣更えだけで終わってしまったのだ。


こんな事なら、帰省を催促していた母の望みを叶えてあげれば良かったと思う。


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