甘い誓いのくちづけを
ベッドに頭を乗せると、ポスッとマヌケな音が鳴った。


膝元に置いたバッグから携帯を取り出して、履歴から理人さんの名前を探し出す。


すぐに表示された彼の名前を見ただけで、どうしようもないくらいに会いたくなった。


「会いたい、です……」


ため息混じりに零した言葉が、シーツをそっと撫でたけど…


それが理人さんに届くはずは無い。


彼に素直な気持ちを伝えたいと思うのに、手にした携帯の発信ボタンを押す事が出来なくて…


勇気を出せない自分の心に、とにかく行動を起こすように言い聞かせようと試みる。


『じゃあ、覚悟してて?』


それなのに、やっぱり今日も自分から連絡をする事が無いまま、とっくに出来ている覚悟と消せない切なさを抱えて眠りに就いた――…。


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