甘い誓いのくちづけを
「どうぞ」


開いたドアの先には広い廊下が続いていて、息を呑みながら足を踏み入れた。


「お邪魔します……」


声が震えていた事に気付いたらしい理人さんが、後ろで笑いを噛み殺したのがわかったけど…


それに反応出来る程の余裕は、もうとっくに無くなっている。


「そのまま進んで、奥の部屋に行って」


脱いだ靴を揃えて、促されるまま廊下を進む。


リビングらしきドアの前で足を止めると、理人さんがあたしの後ろからドアを開けてくれた。


その瞬間、さっきよりも息を呑む景色が視界を占めた。


「綺麗……」


思わず、素直な感情が声になる。


目の前の一面がガラス張りのリビングの向こうには、宝石箱のような光を放つ夜の街が広がっていた。


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