甘い誓いのくちづけを
そのはぐらかし方はずるいと思うのに、心の中を占めるのは甘ったるい程の喜び。


「やっぱり……理人さんはずるいです……」


「そうだね」


苦笑した理人さんの瞳がどこか悲しみを帯びているように見えたのは、たぶん気のせいじゃなかったとは思う。


だけど…


今の自分(アタシ)には、真意を確かめる余裕は無かった。


「これ」


不意に差し出されたのは、肌触りの良さそうな真っ白なバスローブ。


「もうすぐお風呂が沸くから、とりあえず入っておいで。さっき雨に濡れたから、風邪引くといけないし」


「大丈夫です……」


「ダメだよ。上がったら、これを着て。ね?」


理人さんは、小さな子どもを窘めるように優しく笑った。


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