甘い誓いのくちづけを
「うぅ〜……」


湯舟に浸かりながら、情けない声を漏らしてしまう。


広過ぎる脱衣所を経て入ったバスルームも、やっぱり無駄に思えるくらいに広くて…


理人さんが取ってくれたあのホテルの部屋にも負けず劣らずのこの場所では、どう頑張ってもリラックスなんて出来そうに無かった。


脱衣所やバスルームにある物は好きに使って構わない、と言われたけど…


どこを触るのにもとても緊張して、勝手に使う事をとてつもなく申し訳なく思ってしまう。


「理人さんって、本当に何者なのかな……」


素性は頑なに隠そうとするくせに、家には連れて来てくれる。


この状況から、きっと疚(ヤマ)しい事は無いのだろうとは思うけど…


そんな理人さんに、あたしの疑問は益々深まるばかりだった。


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