甘い誓いのくちづけを
「俺がやってあげるよ」


唐突過ぎる申し出に、目を見開いた。


ただでさえ緊張しているのに、それが上乗せされてしまうのは目に見えている。


「いえっ、自分で出来ますから!」


失い掛けていた言葉を何とか声にして全力で首を横に振ると、理人さんが悲しげに眉を下げた。


「やらせて?……ね?」


「い、いえ……あの……」


「大丈夫だよ。ちゃんと綺麗に乾かしてあげるから」


あたしは大丈夫じゃないです……


心の中で訴えながらも、首を傾げて微笑む理人さんにはやっぱり勝てないとすぐにわかって、言い訳を探すのをやめた。


「交渉成立、かな」


すると、彼が子どもみたいに嬉しそうに笑って、胸の奥がキュンと鳴いた。


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