甘い誓いのくちづけを
「そんなに緊張しなくてもいいよ。今はまだ、何もしないから」


鏡越しに目が合った理人さんが、とても悪戯に微笑む。


“今はまだ”って言葉がやけに強調されている気がするのは、きっと気のせいなんかじゃないのだろう。


どうすればいいのかわからなくて、言葉を紡ぐ事すら出来ずに戸惑ってしまう。


すると、理人さんがあたしの体を包んでいた手をゆっくりと動かし、髪をそっと撫でた。


「……やっぱり、一つだけ」


その直後、右側に移動した彼の秀麗な顔。


「え……?」


鏡の中の自分(アタシ)の頭の右側部分に、理人さんの唇が寄せられていた。


「……っ!」


それが髪へのキスだと理解するまでに、ほんの数秒も掛からなかった。


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