甘い誓いのくちづけを
生憎、今朝の空には雲が多い。


だけど…


どうやら、太陽はちゃんと確認出来たらしい。


「あの辺りだよ」


差し出されたグラスを受け取ったあたしに、理人さんが太陽の位置を教えてくれた。


そこにグラスを合わせて覗き込むと、瞳に映ったのは太陽と重なる月。


「綺麗……」


三日月の形をしたそれを目にして素直に感動を口にしたあたしに、理人さんがクスリと笑った。


「後20分くらいしたら、リングが観られるはずだよ」


「はい」


それまでベランダで過ごす事にして、二人で何度もグラスを覗き込みながら他愛のない話をしていた。


起きたばかりの頃には昨夜の緊張の余韻が残っていたけど、いつの間にかそれを忘れるくらい笑顔で過ごしていた――…。


< 295 / 600 >

この作品をシェア

pagetop