甘い誓いのくちづけを
数秒の沈黙の後、さゆりが心底嫌そうに眉をしかめた。


「……有り得ない」


それから、彼女は周囲に人がいない事を充分確認して、眉を寄せたまま続けた。


「確かに、課長はルックスが良くて仕事も出来るし、本当にいい男だとは思うわよ」


「じゃあ……」


「でも、恋愛対象としてはちょっと違うのよね……。何より、社内恋愛なんて面倒なだけだし」


きっぱりと言い切ったさゆりを見ながら、勿体ないと思った。


榊原課長と彼女は美男美女だから、二人が並んで立っているだけで周囲の視線を集める。


それに、課長を相手に普通に話せるさゆりは、中々貴重な存在。


そんな二人が付き合えば、意外と上手くいく気がするのに…。


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