甘い誓いのくちづけを
先月の経験のせいで戸惑いを隠せずにいると、赤信号でブレーキを踏んだ理人さんがあたしを見てフッと笑った。


「瑠花に拒否権はないけどね」


サラリと言い放った彼に、唇を小さく尖らせる。


「そういう言い方は……ずるいと思います……」


「そう?」


「……あたしが拒否出来ない事、わかってますよね?」


「そんな事ないよ。どうすれば瑠花と一緒にいられるのかわからなくて、いつも瑠花の事ばかり考えてる」


疑いの眼差しを向けたいのに、甘い台詞に心が簡単に懐柔(カイジュウ)されてしまう。


胸の奥がキュンと鳴いたのを感じながら、本当は一緒に過ごせるのがとても嬉しいって事を、後でちゃんと伝えようと思った――…。


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