甘い誓いのくちづけを

とりあえずは、自分も名乗るべきなのだと悟る。


「荻原瑠花です……」


戸惑いながらも笑みを浮かべたあたしに、綺麗なネイルが施された手を差し出される。


その手を怖ず怖ずと両手で握ると、間宮さんがクスッと笑った。


「とても可愛らしい方ね、貴島さん」


理人さんは何とも言えない表情を浮かべ、あたしに笑みを向けた。


「瑠花、悪いけど先に車に……」


「麗お嬢様！」


明らかに繕われた笑顔に嫌な予感を抱いた時、低い声が飛んで来た。


思わず声がした方に視線を向けると、二人の男性がロビーに入って来て…


「申し訳ございません、専務」


今度は間宮さんの名前を呼んだ時のものとは違う声で、丁寧な謝罪の言葉が紡がれた。