甘い誓いのくちづけを
「瑠花……」


あたしの事を好きだと言ってくれたのと同じ声で呼ばれた名前に、胸の奥がキュッと締め付けられる。


今の気持ちを、上手く言葉にする事なんて出来ない。


だけど…


こんなにも心が痛む理由だけは、すぐにわかってしまった。


「……あっ……あたし……っ……」


あたしには不釣り合いなくらい素敵な理人さんが、本当に手の届かないような男性(ヒト)だった事なんかよりも…。


それを、たった今会ったばかりの女性(ヒト)の口から、簡単に聞かされた事なんかよりも…。


自分の事を頑なに隠していた理人さんの気持ちが、たった一瞬でわからなくなってしまった事…。


それが、何よりも苦しくて何よりも痛かった。


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