甘い誓いのくちづけを
「瑠花、話を……」


「今は無理です……っ!」


頭の中が整理出来なくて、理人さんの言葉を受け入れるだけの余裕が無い。


「ごめんなさい……」


そんな気持ちを込めて彼を見上げれば、目の前の顔が苦しげに歪んでいた。


「お願いだから……離して……」


それでも、今は躊躇う事すら無いまま震える声で懇願すると、名残惜しげにゆっくりと手首が解放された。


理人さんの体温に包まれていた場所から、熱が奪われていく。


「少し……時間を下さい……」


あたしはもう、それを言うだけで精一杯だった。


ただただ、その場を離れる事しか頭に無くて…


間宮さん達に頭を下げた後、再び逃げるように走り出してマンションを後にした。


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