甘い誓いのくちづけを
今日は大通りに出て、すぐにタクシーを拾った。


いつもなら電車を使うけど、今はとても人前に出られるような状態じゃないから…。


あたしの顔を見た運転手は怪訝な表情をしたけど、行き先を告げると何も言わずに車を走らせた。


理人さんの手を振り払ったのは自分(アタシ)なのに、彼が追い掛けて来てくれなかった事が悲しい。


だけどその反面、どこか安堵している自分(アタシ)がいた。


『好きだよ、瑠花』


優しい声でそう言ってくれた理人さんの気持ちは、決して嘘なんかじゃない。


それは、わかっているつもりなのに…


疑心暗鬼になってしまって、どうしても今までみたいには思えない。


理人さんの本音が見えない事が、ただただ苦しかった――…。


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