甘い誓いのくちづけを
―――――――…



マンションの前で下ろして貰う勇気が無くて、その少し手前で車を停めて貰った。


相変わらず優雅さが溢れる外観に尻込みしそうになりながらも、とりあえずエントランスに向かおうとしたけど…


考えてみれば、ここに一人で来るのが初めてだという事に気付いて、足が地面に張り付いてしまった。


踏み出そうとした足が、硬直したように動かない。


理人さんにとても会いたいと思うのに、突然訪ねるのは迷惑なんじゃないかと益々不安になっていた。


「……意気地なし」


いつまで経っても足を踏み出せない自分自身に、恨めしげな気持ちでいっぱいになる。


それでもマンションへの一歩を踏み出せなくて、ため息混じりにすぐ近くにあった電柱にもたれ掛かった。


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