甘い誓いのくちづけを
一瞬、どうして頬が濡れているのか、わからなかった。


自分が泣いている事を理解したのは、それから数秒後の事だった。


胸の奥が軋むように痛み出した事には、気付かない振りをしていたけど…


締め付けられるような苦しさを感じたその場所は、出来たばかりの傷の存在を嫌という程に主張する。


ポロポロと零れる涙は、どうしたって止まる気がしなくて…


時折すれ違う人の視線から逃れるように、一目散に走り出した。


人目を避けるようにして着いた先は、閑静な住宅街の中に隠れるように存在していた小さな公園。


一度は引き寄せられるように、その中に入ったけど…


入口から数歩進んだところで、足が地面に張り付いたようにピタリと止まった。


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