甘い誓いのくちづけを
ズキズキと痛む胸の奥から、悲しみが込み上げて来る。


あたしはきっと、自分が思っている以上に理人さんの事を好きになっていたのだと、痛いくらいに実感した。


ポタポタと零れ落ちる涙が、電灯に照らされた地面を濡らしていく。


俯いて唇を噛み締めていると、地面に出来た歪な染みに紛れるように頭上から雫が降って来た。


ポタリ、ポタリ…。


まるで遠慮を見せるように静かに降り始めたのは、雨滴(ウテキ)。


ゆっくりと顔を上げたあたしは、淀んだ夜空を仰いだ。


シャワーのようにサーッと鳴り始めた雨音は、瞬く間に強くなっていく。


ただ、どんなに濡れても歩き出す気にはなれなくて呆然と立ち尽くしていると、バッグの中の携帯が震え出した。


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