甘い誓いのくちづけを
ゆっくりとドアを開けると、視界に文博の姿が入って来た。


やっぱり、少しだけ痩せたみたい。


そんな事を考えている間に訪れたのは、ぎこちなさが混じった沈黙。


だけど…


「久しぶり、だな……」


それは、すぐに小さく笑った文博によって打ち消された。


彼らしくも無い、どこか柔らかさを含んだ微笑みに、戸惑いが益々大きくなる。


「久しぶり……」


それでも同じように返せば、文博がホッとしたように笑った。


再び訪れた沈黙に飲み込まれそうになりながらも、何とか思考を働かせて口を開く。


「どうしたの……?」


控えめにそれだけを訊くと、文博はほんの一瞬だけ瞳に戸惑いの色を浮かべた後で、どこか強張ったような真剣な表情を見せた。


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