甘い誓いのくちづけを
「俺、来月から転勤するんだ」


「え?」


「アメリカ支社にな」


文博がそう言った後すぐに、いつだったか彼が海外勤務を希望していた事を思い出した。


「じゃあ、希望が叶ったのね?おめでとう」


「いや……」


笑顔を向けたあたしに、ため息混じりの笑みが返って来た。


「残念ながら、飛ばされるようなものだよ……。降格とまではいかないけど今よりも薄給になるだろうし、海外勤務は希望してたけど素直に喜べない……。せめて瑠花とやり直せたら、『一緒に来てくれないか』って言うつもりだったんだけどな……」


思わず目を見開いてしまったのは、仕事人間の文博がそんな事になった理由がわからなかったから…。


ただ、その理由を訊けるはずも無くて、何も言えなくなってしまった。


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