甘い誓いのくちづけを
「もしかして、俺が捨てたと思ってたのか?」


「捨てた、って言うか……。いつもはその腕時計を着けてくれてたのに、あの日は違う物をしてたでしょ?」


面食らったような文博を見つめて、微苦笑を零す。


「だから、もう本当にダメなんだ、って思って……」


「……つくづくツイてないな、俺は」


文博は自嘲気味な笑みでため息を落として、眉を寄せたままフッと笑った。


「でも、これで思い知らされたよ。俺達はどうしたってすれ違う運命だったのかもしれない、って……」


確かに、そうだったのかもしれない。


だけど…


「それでも、最後にもう一つ誤解が解けて良かったと思う事にするよ」


あたしも素直にそう思えたから、文博の言葉に大きく頷いた。


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