甘い誓いのくちづけを
理人さんは運転席にいた相模さんに声を掛けてから荷物を下ろし、あたしをエントランスへと促した。


「……あの、良かったんですか?」


「ん?」


「もしかして、相模さんと部屋まで一緒に行くつもりだったんじゃ……」


「あぁ、大丈夫だよ」


ぎこちない雰囲気の中、理人さんがあたしの不安を取り除くようにフッと笑う。


「元々、相模とはここで別れるつもりだったから」


彼はそう言った後、フロントのドアマンの元へと歩み寄った。


「おかえりなさいませ、貴島様」


「何か届いてる?」


「いえ、伝言もありません」


「ありがとう」


久しぶりに見るドアマンに妙な懐かしさを感じながら会釈をして、理人さんと一緒にエレベーターに乗り込んだ。


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