甘い誓いのくちづけを
程なくして着いた理人さんの部屋に、またしても懐かしさを感じた。


まだ数える程しか来た事が無いのに、そんな風に思うのはおかしいのかもしれないけど、たぶんそれが適切な表現だと思う。


「何か飲む?」


「いえ」


ガラスの向こうに広がっているのは、宝石箱のような光が消え、代わりに太陽の光が降り注ぐ街。


いつもと違うその景色を見下ろしていると、荷物をベッドルームに置いて戻って来た理人さんがあたしの隣に立った。


訪れた一瞬の沈黙の後、ゆっくりと口を開く。


「英二さんと、青空園の理事長に会いました」


「……そう」


理人さんは僅かに目を見開いてから、全てを悟るように呟いた。


あたしは、そんな彼の両手を取ってギュッと握った。


< 493 / 600 >

この作品をシェア

pagetop