甘い誓いのくちづけを
綺麗なドレスを身に纏った事で、しばらくの間気分は高揚していたけど…


パーティーの会場になっている高級ホテルに着いた瞬間、慣れない場所に踏み入れる事への不安でいっぱいになった。


「こっちよ、瑠花さん」


「は、はい……」


床に敷かれたワインレッドの絨毯は毛足が長く、8センチもの高さがあるピンヒールを履いたあたしの足音を飲み込む。


「ほら、瑠花さん。あなたの恋人がお待ちかねよ」


前を歩いていた間宮さんの言葉で顔を上げると、視線の先に理人さんがいた。


秀麗な表情が一層際立つ、上品なダークスーツ。


それを自然に着熟す理人さんは、やっぱりどこかの王子様なんじゃないかと思う。


彼はあたし達の元に歩いて来ると、柔らかい笑みを零した。


< 549 / 600 >

この作品をシェア

pagetop