甘い誓いのくちづけを
「実は、もう一つ渡したい物があるんだ」


ネックレスを着けてくれた理人さんが、そんな事を口にした。


こんなにもたくさんの幸せを貰ったのに、これ以上何をくれるというのだろう。


そう思いながら小首を傾げると、理人さんがあたしの手を引いて窓際に歩み寄った。


「見て」


視界を占めるのは、目映い光。


改めて夜景をプレゼントしてくれたのだと、笑みを浮かべる。


「本当に綺麗……。宝石みたいな夜景ですね」


大きな窓一面を占領する輝きを余す事無く瞳に映したくて、ゆっくりと視線を動かしていく。


その直後、窓台の隅の小さな光に気付いた。


目の前に広がる宝石箱の中でひっそりと、だけど何よりもキラキラと輝いている高貴な宝石(イシ)。


それは間違いなく、ガラスよりもこちら側にあった。


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