甘い誓いのくちづけを
「見付けた?」


窓台の隅を見つめたまま言葉を失ったあたしの耳に届いたのは、どこか嬉しそうな声音。


きっと最初からそこにあったのだろうけど、夜景や薔薇に気を取られていてちっとも気が付かなかった。


「これ……」


「宝石箱の中に、本物を隠しておいたんだ」


悪戯っ子のようにフッと笑った理人さんを見つめると、彼が小さな箱からその宝石が着いた物だけを取り出した。


「二度目の夜に交わした約束を、やっと果たせるよ」


頭の中で鮮明に蘇るのは、二度目の夜に会った時の理人さんの言葉。


『俺ならきっと、君に似合う最高のリングを見付け出してあげられるよ』


彼の綺麗な指先で掴まれているのは、幾重(イクエ)にも輝きを放っているダイヤのリングだった。


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