甘い誓いのくちづけを
一階に着いたエレベーターを降りると、昨夜も見た景色が広がっていた。


この場所で、理人さんと並んで立っていた事。


フロントに向かう途中にあるラウンジで彼と出会い、文博に婚約を破棄されてしまった事。


時間を巻き戻すように、記憶が頭の中を駆け巡る。


そんな中、不安な気持ちを抱えながらフロントに行くと、男性スタッフがニッコリと微笑んだ。


「おはようございます」


「おはようございます。あの、チェックアウトをお願いします」


「かしこまりました」


カードキーを差し出したあたしに向けられたのは、朝に相応しい爽やかな笑み。


「少々お待ち下さいませ」


笑顔を返す余裕も無いままでいると、フロントスタッフが口を開いた。


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