甘い誓いのくちづけを
満員電車に揺られながら、今朝まで愛用していた物とは違う腕時計に何度も視線を落とす。


どうしよう……


このままだと、どんなに頑張っても理人さんとの約束の時間には間に合わない。


こうなったのは自分のせいだとは言え、昨夜迷惑を掛けた男性(ヒト)に更に迷惑を掛けるはめになる事が目に見えて…


どんなに焦っても仕方ない事はわかっているのに、時間を気にしては焦る事しか出来なかった。


遅刻しちゃう……


そもそもこんな事になったのは、大切な約束を忘れてしまっていたから…。


昨夜から色々とあり過ぎて、理人さんと文博との事で頭がいっぱいだった。


そのせいで、昨日の夕方まではちゃんと覚えていたはずの予定が、すっかり頭の中から抜けてしまっていたのだ――…。


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