甘い誓いのくちづけを
―――――――…
近付いていた革靴の足音が、すぐ傍で止まった。
顔を上げて視界に入って来たのは、相変わらず眉間にシワを寄せて気難しい顔をしている文博。
「悪い。仕事が押してて、抜けられなかったんだ」
「ううん、そんなに待ってないから」
遅刻は、いつもの事。
むしろ、時間を守ってくれた事の方が少ないくらい。
約束の時間よりも早く来てくれたのは数える程で、それも付き合い始めた頃だけだった気がする。
「そんなに忙しいなら、無理しなくても良かったのに」
「いや、出来るだけ早く話しておきたかったから」
「そんなに急ぎの用事だったの?だったら、電話でも良かっ……」
「瑠花」
向かい側の椅子に腰掛けた文博が、あたしの言葉を遮った。