甘い誓いのくちづけを
ビールで乾杯をした直後、さゆりはジョッキをドンッと置いてニッコリと笑った。


「……で、“王子様”って誰の事?」


文博との婚約が破談になった事は、数日前に告げたばかり。


だから、昼間あたしが口にした“王子様”が彼の事じゃないのは、さゆりもわかっているはず。


どんな風に説明しようかと悩んで、それなりの言葉を探そうとしたけど…


「えっと……文博に婚約を破棄された日に出会った人……」


さゆりにはありのままを話そうと思えて、結局は包み隠さずに告げた。


「何、それ!?初耳なんだけど!詳しく話しなさい!」


案の定、文博に婚約を破棄された事しか説明していなかったあたしに、彼女が昼間と同じくらい身を乗り出して食い付いて来た。


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