今さらなのよ!
長身に黒髪をなびかせながら、男は口を開いた。
「賀川盛名。もちろんこの国の住人としての名前だ。
イプリファ帝国、皇帝のリナク様には初めてお目にかかる。
とはいっても、その記憶はなさそうだな。」
「イプリファ?皇帝?・・・リナクとは、俺の本当の名前だというのか?
そんなことを知っているというのは、俺の側近をしていた者の子孫か?」
「残念だが、俺はイプリファとは敵対していた民族の出だ。
おっと、これから戦闘しようなんて気はない。
さっきのも挨拶がわりなだけだしな。
もう、お互いに滅びてしまっている状況では、戦闘は意味がないと俺は思っている。」
「敵か・・・。だが、その考えには俺も同感だ。
大義が何かさえわからずに戦闘などできはしないと思う。
じゃあ、俺に何の用で出てきたんだ?」
「春川かすみという女子高生を知っているだろう。
彼女はおまえの兄とどういう関係なんだ?
俺は、あの娘が気にいってな。
これから交際を始めて、卒業後に結婚したいと思う。」
「け、結婚だと!
いったい、どういう理由だ。
彼女は俺の兄と同じ思いでつながっている。
部外者がどうすることもできないぞ。」