ヒ-ロ-なんていらない
ドンっ
後ろから突き飛ばされたような感触で勢いよく前のめりに転んだ。
「痛った~い!なっ何するよ。」と振り返ると
真っ青な顔してお腹を抱えて座り込んでいる女の人がいた。
ハッとした、お腹?もしかしたら赤ちゃん?
「大丈夫ですか??」呼びかけても苦痛で唸っているだけだった。
信号が変わり人の波が動いていく
あたしとその人だけが取り残されて
「誰か助けてください!救急車を呼んで!!」
あたしの叫ぶ声も雑踏の音にかき消されて行って
あたしの声が誰にも届かないようで不安に押しつぶされた。
「助けて!!」