ヒ-ロ-なんていらない
保険証を出し受付を済まして


待合席に戻ろうとすると


「ほのかちゃん。」


息を切らせた宝君が立っていた。


あたしの知らない大人の宝君が、白衣を着てあたしを見降ろしていた。


「宝君。」


会いたくて持ち焦がれた宝君がそこに居るのに、


何も言葉にならずに、見つめることしかできなかった。


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