ヒ-ロ-なんていらない
いつものバ-のいつもの席に紬君は座っていた。

「紬君、ごめんね仕事が終わらなくって。」

あたしが来る方を愛おしそうに眼を細めて見ていた紬君の眼が、

一瞬大きく開かれたかと思うと、

「宝さん。」

と小さく漏らし、

悲しい顔に変わったのが分かった。

「紬君あのね、」

「うん、わかったよ。」

「紬君聞いて、」

「何を?」

「あたしは。」

「何を聞けって言うの?結局俺は10年かかってもその人を超えることはできない

 ってことでしょ?」



「そんな、、、


 うん、


 でも結果的にはそうなるね。


 ごめんなさい。」


「無神経だね、別れ話に、男連れてくるなんて


 穂香ちゃんらしくないよ。」


紬君のやり場のないいらだちがあたしの胸を刺す。
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