ヒ-ロ-なんていらない
長く沈黙したあたし達の横から、

「ごめん紬、横からかっさらうようなまねして、


 でも、穂香ちゃんは、渡せないから。


 今まで守ってくれてありがとな。」


そう口火を切ったのは宝君だった。


睨むようにあたし達を見据えた紬君は、表情を崩して


ゆるゆると、話し始めた。


「ずるいですよね、宝さんは、


俺が傍にいてでも手が出せないこと分かってたんですよね。


あの事があったから。


俺、あのせいでみんなの信頼も好きな人も家族も全部なくして、


でも、それは自分のせいだと分かってて、


高校で穂香ちゃんと会って、罪滅ぼしができたらって思ってた。

でも一緒に過せば過ごすほど、離れられなくなって、

何度も離れようと思いましたよ。

罪悪感を抱きながら穂香ちゃんといたって、

苦しさしかなかったから。

でも好きなんですよ、好きで好きで、

だから離れられなかった。

やっと最近、気持ちが俺に傾きかけてることが分かったのに。

それなのにを、

なんで今なんですか。」


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