ヒ-ロ-なんていらない
あたしは目を閉じて宝君の温もりを感じていた。
「穂香ちゃんは忘れたいことだと思うけど、紬の事件。
話しても大丈夫?」
「うん。」
「あれはさあ、俺達にも大事件だったんだ。」
「うん。」
「紬はずっと狙っていたんだ穂香ちゃんのこと。」
「え?」
「健一が気に入ってたから俺も言えなかったんだけど、
あの日は様子も変でさ、あんなビデオ持ってきて
座る位置まで決めて。自分はもう見たからとか言って
出口の傍で雑誌なんか見てて。
気にはなってたんだ。
丁度そのイヤらしいような場面で、
ちらっとあいつ見たら姿がなくって。
俺焦ったよ。穂香ちゃんが危ないって直感したんだ。」