ヒ-ロ-なんていらない
あたしは黙って王子の話を聞いていた。

穏やかな顔で話していた王子の顔が少し歪んで


大きく息を吐いた。


「でも、そんな毎日は、あることをきっかけに終わりを告げたんだ。」


息を詰めている王子の深沢宝が肩を抱いて


「健一俺が変わるよ。」

と声を掛けた。


「仲間の一人に、妹のほのかちゃんが襲われたんだ。


 彼女はまだ小3だった。


 俺が助けて大変な事態にはならなかったけど、


 そのあと、口がきけなくなったり、


 とつぜんパニックなったり精神的なダメ-ジは簡単には戻らなくて。


 特に、男に対しての拒否の仕方は

 
 家族の健一や、父親に対しても酷くて、


 彼女を救った俺だけが唯一心を許してくれる男だった。」


深川宝が、王子といつもいるのはこの事件があってこそなのだと思った。


彼は、その妹を愛しているのだろうとも見て取れた。


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