千尋くん、千尋くん







カウンターから離れて、段ボールの置いてあるテーブルへと向かう。





とりあえず、どれくらいの本が入っているのか確かめるために、貼ってあったガムテープを剥がそうとするが……。






────カリカリカリ……。





────カリカリカリ……。







は、剥がれない(泣)。




なんだろう、これ。




ガムテープひとつ剥がせないあたしって……なんだか泣けてくる。






その時。





「貸してみ」






近くにいた彼が、そう言ってあたしの代わりにガムテープを剥がしてくれる。





一瞬だけ、その優しいところが千尋くんを思い出させる。







なんでだろう。





タイプも、雰囲気も、全然千尋くんと違うのに。





少しだけ、この人が千尋くんに似ていると思った。







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