千尋くん、千尋くん
じっと見ていたせいか、向こうもあたし達のほうに視線を向ける。
大きくて丸っぽいチワワみたいな瞳と、筋のとおった鼻、薄くて形のいい唇。
……あれ? この顔。
いやいや、気のせいだ。
もう一度よく見てみようと、目を細めたとき。
「……瑞穂」
隣の千尋くんが、彼を見てそう呟いた。
瑞、穂?
この人の名前かな?
さっきも、なんか女の子と口論してたときにそう聞こえたし。
じゃあ、彼は千尋くんのお友達?
うー……頭の中がハテナだらけだ。
「兄ちゃん!」