千尋くん、千尋くん
とりあえず、部屋の中を見渡してみたり……。
「ち、千尋くん……っぽい」
無駄なものはなく、基本黒か白の家具。
唯一青のベッドカバーだけが部屋の中で、映えている。
入ってからすぐにある本棚には、なんだか頭の良さそうな本がいっぱい並んでいたり。
ガラスのローテーブルの上には、今日の朝時間がなかったのか、まだ片づけていないマグカップが置いてある。
匂いも、雰囲気も、全部が全部千尋くんだ。
そこで、ふと思い出す。
いつぞや、当時付き合っていた彼氏の家に行ったときの、ヒメちゃんの言葉を。
"なんか、彼氏がトイレ行ってて。たまたまベッドの下に落としたピアス転がってっちゃったんだよねぇ。そしたらさ、もうドン引き! ベッドの下にめっちゃエロ本隠してあったの! 1冊や2冊くらいなら普通だと思うけど、あの量は引いたね!"
"えっ、1冊や2冊持ってるのって普通なの!?"
"男子はみんな持ってるっしょ! 避けては通れない道だよね〜"
"……そう、なんだ"