千尋くん、千尋くん
「い、いえっ! 結構です……っ」
「ぷはっ、面白いよね。えーと、名前なんだっけ?」
「あ、の……羽咲あるみ、です」
「そ。オレ、もう知ってると思うけど瑞穂。中3ね」
「……よ、よろしく? 瑞穂くん」
「よろしくね、あるみ」
中学3年生の子に、初対面で呼び捨てされちゃうって……あたしには年上としての威厳がないのだろうか……。
いや、別にいいのだけれど。
「ねぇ」
「は、はい……?」
ちょっと落ち込んでいると、ドアのそばにいた瑞穂くんが、あたしの近くに来て数センチ高いところからあたしを見下ろす。