千尋くん、千尋くん
重ねられる千尋くんの悪態に、さらにダメージを受けながらも止まらない涙を服の袖で拭う。
自分でもめんどくさい女だとは思うが、女優ではないので自由自在に涙を操ることはできない。
止まらないものは止まらないのだ。
「あるみ」
落ち着いた声色で名前を呼ばれて顔を上げる。
寝転がっていた千尋くんは、やれやれといった感じで上半身を起こして、あたしを手招きしている。
「行っても……いい、の?」
恐る恐る聞くと、千尋くんの頭がコクリと縦に動いたので、ゆっくり近寄って隣に座る。