千尋くん、千尋くん
妬いてほしかったから
「ごめんね、遅くまで引き止めちゃって」
「いっ、いえ! こちらこそ勝手にお邪魔した上に、晩ごはんまで……」
時刻は、8時過ぎ。
熾音さんお手製の晩ごはんをごちそうになって、皿洗いをお手伝いし終わってから、そろそろおいとますることに。
「本当においしかったです。ごちそうさまでした」
玄関で、もう一度深く頭を下げる。
いえいえと笑顔を見せる熾音さんの後ろから、今度は千尋くんがやって来る。
「あほか、鞄うちに置いてく気か」
「あ……」
そういえば、千尋くんの部屋に置いたままだった。
でも、こういうことがあるから、千尋くんに単純だとか頭が足りないだとか言われても、否定できないんだと改めて思う。