千尋くん、千尋くん
そのまま、千尋くんとは他愛もない会話をして、エレベーターで1階まで降りる。
「……あ」
その時、ロビーの向こう側の入り口から歩いてくる女の人を見て、千尋くんがそんな声を漏らした。
……だ、れ?
こっちのエレベーター側へ歩いてくる彼女を、あたしは目を凝らして見てみる。
「……! 千尋ちゃん!?」
………千尋……ちゃん?
あっちもあたしたちの存在に気づき、そう千尋くんの名前を呼んで小走りしてくる。
………可愛い、人。
こっちへ向かってくる彼女を見て、そう思った。