千尋くん、千尋くん
「えっと……千尋ちゃんの彼女、かな?」
「………は、ぃ」
さっき千尋くんに、たぶんは言っちゃダメって言われた。
だけど、やっぱり自信を持ってあたしに断言することは難しくて、声が小さくなる。
「あのね、あたしは……」
「梓さん」
梓さんという彼女があたしに何か言おうとしたところで、千尋くんが言葉を遮る。
「なんだい、千尋ちゃん。あたし今から彼女さんに自己紹介と挨拶をしようと……」
「今日はもう遅いし、これからこいつ送んなきゃダメだから。それは今度にしてください」
「あー、そっか。千尋ちゃんも彼女さんもまだ高校生なんだもんね」
別に、悪気があったわけじゃないのに。
その言葉が「まだ子供」と言われてるみたいで、ちょっと嫌だった。