千尋くん、千尋くん








「こいつ送ったら戻るんで、うちに先に行っててください」





千尋くんがそう言って、梓さんが分かったと頷く。





その動作が、スローモーションに見えた。






うちって……?






梓さんは同じマンションの住人とかじゃないの?






千尋くんに会いに、このマンションに来たの?






2人は、どういう関係?





分かんない……分かんないけど。








なんか、嫌だ。





あたしの知らない誰かが、千尋くんとそんな関係だってことも。






今この胸のなかにある、モヤモヤしてる曇った感情も。







< 180 / 397 >

この作品をシェア

pagetop