千尋くん、千尋くん








今日は晴れてて、星空が綺麗だ。




まだ上ったばかりの夏の大三角が、ちょっとだけ見える。





たぶんあれはベガ、あれはアルタイル、あれはデネブ。




三点の星を結んだ細長い三角形だ。








隣で千尋くんの足音を聞きながら、空ばかり見上げて歩いた。






「夏の大三角のうち、ベガは織姫でアルタイルは彦星なんだって」




いつの間にか同じく空を見ていた千尋くんがそう言った。





「物知りだね、千尋くん……」






さりげなく、小さな声でそう呟いたつもりだったけど、我慢できなかった。










「あるみは泣くのが趣味なの?」





「ほっ……ほっといて、ください……っ」







ゆっくり頬っぺたを涙が伝ったのが、自分でも分かった。







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