千尋くん、千尋くん
ということは……。
「も、もしかして千尋くん……あたしが梓さんのこと気にするって分かってて、自己紹介させなかったの?」
ロビーで会ったあのとき、あたしに自己紹介しようとした梓さん。
自己紹介するくらい、ほんの立ち話で何分もかからないはずなのに、それを制した千尋くん。
もしあそこで彼女が熾音さんの彼女だって分かっていたとしたら、こんなことにはならなかったのに。
「うん」
「ひ、ひどい……!」
「でもそこで気付かなかったあるみもバカじゃない?」
「っバカ……!? 鬼だ……千尋くんひどすぎる」