千尋くん、千尋くん
そうだよね、少し前のあたしならそう言ってたのかな……。
「た、確かに、女の子を泣かせるのはあんまり良くないけど……それが犯罪ってわけでもないし、って大げさか」
自分で口に出しておいて、訂正する。
自分が思っていることを、分かりやすく相手に説明するのは結構難しいものだ。
「女の子は哀しくても泣くし、あ、あたしみたいな意気地無しだと嬉しくて泣くこともあるし」
「ほぅ、自分でちゃんと意気地無しって分かってるのか、あるみは」
いやいや、そこは触れないでいただきたい……瑞穂くん。
「だから、泣くことにもいろいろ意味があるわけだし……。もしそこで瑞穂くんが、女の子を泣かせちゃいけないってルールをつくるとするでしょ?」
「ルール?」
「うん。でもそしたら、そのぶん瑞穂くんは考えちゃうんだよ。あぁ、こうしちゃったら彼女は泣くから我慢しよう。きっとあぁしたら彼女は泣くから、やめておこう。みたいな感じで」
「……まぁ、そうだろうね」