千尋くん、千尋くん
そう思っていると、目の前の女の子の視線が瑞穂くんからあたしへと移される。
何度も首の角度を変えて、あたしと瑞穂くんを交互に見る彼女は、だんだん眉間にしわを寄せていく。
「瑞穂、どういうこと?」
「ミサちゃん、違うって! あのな、この子は……」
「何がどう違うのよっ! 今日は大事な用事があるから遊べないって言ってたじゃん!」
「い、いや……だから」
「あたしに嘘ついて、違う女と遊んでるなんて……!」
……あ、あれ?
なんだろう、この修羅場は……。
あたし、なんかまずいことしちゃったかな?
いまいち状況が掴めずに、隣の瑞穂くんに目で助けを求めると……。
「あれ、今の彼女なんだよね。今日大事な用事あるから遊べないって、嘘ついてきちゃった」
コソッと、小さな声でそうあたしに耳打ちした。